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膜に付着した有機物残さは、礫間に生息するゴカイなどの多毛類、タマキビなどの巻き貝、エビ・カニ類によって生物膜とともに食べられ掃除されるこれらの種々の作用により、海水が浄化されるとともに、付着物の減容化も進むものと考えられる
以上のようにして海水は浄化され、礫間に抑留された有機物質の分解や系外への移動、際間に生息する底生生物の系外への移動などによって、堤体内に捕捉された汚濁物質の減容化が進む。
3. 現地実証実験施設における水質浄化性能
石積み浄化堤の初期浄化特性、季節による性能の変動、水量負荷を変化させたときの堤体の水質浄化性能について、これまでに得られた結果を報告する5)。
3−1. 現地実験の概要
(1)実験施設
実験施設は水深が2〜4mの三河湾湾奥沿岸域に93年7月に築造した。浄化堤の芯材には径が20〜30cmの砕石を用い、堤頂幅、堤高はそれぞれ5mとして、水際線に平行に築堤した。Fig-2に示すように、浄化堤の背後の3面には鋼矢板を打設し、海水交換が浄化堤を介してのみ行われる間口6m、奥行き約10mの内水域を創出した。なお、実験海域一帯の底質にはヘドロが堆積しており、築堤後、内水域については約20cm厚の浚渫、30〜40cm厚の覆砂を行った。
(2)通年調査の実施要領
本実験は1993年7月より1994年11月にかけて実施した。浄化堤と鋼矢板によって囲まれた水域(内水域)と実験施設の近傍の海域(外水域)について、現地で透明度、水温、溶存酸度濃度等の計測を行うとともに、表層水(水深0〜50cm)を採取して懸濁物質(SS)濃度、化学的談素要求量(CODMn)、クロロフィルa濃度等を分析した。なお、SS,CODMnの調査は1日2回の調査を週に3〜5日の頻度で行った。
(3)水量負荷の影響評価のための揚水実験の要領
本実験は1994年8〜11月および1995年6〜10月に実施した。内水域最奥部の鋼矢板から約1mの地点に揚水ポンプ(0.5m3/min×1基、1m3/min×4基)を設置し、ポンプにはフレキシブルホースを接続し、これを銅矢板の背面に導き内水域の海水を外水域に排出し、水量負荷を変更した。なお、内水域の海水を上下層とも均等に排出するため、内水域底部に散気管を設置し、緩やかに曝気することで海水を撹拌した。これらの揚水条件は、潮位差1mのとき内水域の奥行きを30〜240m延長した場合の流入水量に相当する内外水域の定点で9〜15時の間に、表層水(水深からO〜50cm)、底層水(底面から+50〜100cm)を2回ないし4回採取し、濁度とクロロフィル濃度(クロロフィルaとフェオフィチンの含量)を分析した。なお、堤体内部および内水域の水量を考慮し、揚水ポンプは計測の前日ないし前々日に設定し、運転を開始した。
3−2. 通年調査の結果
(1)初期特性
築堤から約1ヶ月を経過した1993年8月上旬までは、内水域と外水域はともに茶褐色を呈し、明確な透明度の違いは認められなかった。それが、1993年8月中旬、すなわち、石積み浄化堤を築造して約40日を経過した頃より、内水域の透明度が外水域に比べて明らかに良好となった。同時期、被覆石の間から採取した潮下帯にあった芯材の礫の表面は茶色を呈し、微生物などの付着が観察された。このことから、礫に付着した生物膜が海水浄化に大きく関与していることが推

191-1.gif

Fig-2 0n-site experimental facility

 

 

 

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